チリン…チリン…。
雄平にもらった鈴を、無意味に振るのが癖になっていた。
この鈴の音を聞くと、あの特別な夜を思い出す。
ホタルが飛び交う幻想的な景色を思い出す。
雄平の笑顔を思い出す。
大きな手のぬくもりを、思い出す。
そしてその度、胸がきゅっとしめつけられる。
チリン…。
雄平が、あたしの居場所を見つけてくれるための、目印。
雄平が、あたしをいつも見ていてくれた、証。
あたしは雄平にとって、特別な存在?
でもそれは、どういう“特別”?
親友?
それとも…
「ないない!それはないよ!」
声に出して否定してみる。
だって、雄平があたしのことを、そういう目で見るなんて、全然心当たりがない。
いつもふざけ合って、じゃれ合って、甘い雰囲気なんて一切なかった。
ちゃんと女の子として扱ってくれていることはわかるけれど、それ以上ものを感じたことなんてない。
『運命だね』
『俺がいるじゃん』
そんなの、からかっているだけでしょ?
でも、もしも。
もし仮に、雄平があたしのこと、女の子としての“特別”と思ってくれているとしたら。
もしそうなら、あたしはどう思う?