一学期が終わろうとしていた。
受験生の中学三年生に夏休みなどない、と言われても、そんなこと聞くわけが、ない。
「夏祭りの日、みんなで花火しようよ!」
美保が、みんなにそう言って回っている。
夏祭りというのは、夏休みに入ってすぐ、地元の小さな神社を中心にして行われるお祭りで、露店が出たり、催し物が行われたりする。
あたしもちょうど、香織と行く約束をしていたところだ。
「男子もみんな来るって」
うふふ、と含み笑いをして、美保は次のグループのもとへ向かった。
「…だってさ。お祭りの後って言ってたから、行こうか」
あたしがそう言うと、香織は楽しげに頷く。
「うん、花火なんて久しぶり。杏奈、浴衣着てこっ」
うきうきとはしゃぐ香織には悪いと思いながらも、
「あたしは…いいや、浴衣は」
もう、目立つのはたくさんだ。
香織にもそれがわかってくれたようで、今回はすんなりと納得してくれた。