夏も本格的になろうとする頃、あたしの回りでは、奇妙なことが起こっていた。
「僕と付き合ってください!」
二年生だという彼は、あたしを呼び出した先で突然そう言った。
「体育大会で先輩のこと初めて見た時に一目惚れしました!付き合ってください!」
「あ、あの、気持ちはうれしいんだけど、その、ご、ごめんなさい」
こんな風にしどろもどろに断り、肩を落として帰っていく姿を見る度、胸がずっしりと重くなる。
体育大会でのチアが相当目立ったらしく、「一目惚れ」したと言ってくる男の子に何回か交際を申し込まれた。
それはとてもうれしいことなのだけど、あたしはひどく狼狽していた。
さらに、今まであたしを知らなかった後輩はともかく、気心の知れた同級生からも交際を申し込まれ始めたことが、あたしを混乱させた。
『ずっと好きだった』と言われたこともあった。
あまり話したことのない人からそんなこと言われても、ピンとこないというのが正直なところ。
あたしのことをよく知らないのにどうして…と思う気持ちもある。
あたしの嫌な所を知ったら、きっと嫌いになるくせに…。
それでもやっぱり、好きだと言ってくれる気持ちがうれしいのも本当。
だから、心がすり減る。