「お父さん」

 私はしばらく休んでいた仕事に復帰した。

「なんだ?」

「心配かけてごめん」

 私の言葉に、父さんは笑った。

「オマエがげんきで安心したよ」

「…あとで、話があるの」

 私の言葉に父さんの顔から笑顔が消えた。

「―――わかった」

 私はその返事にホッとしながら仕事に戻った。

 もう、店に奏太が来ることも、お客さんの皆と奏太の噂話をすることもできない。

 その事実が今、実感を持って私に迫ってきた。

 奏太がいない、それを本当の意味で理解した途端、背化は色あせて見えた。