第71話 『笑う地蔵』 語り手 斎条弘子

 小松っちゃんが去り、懐かしい空気が残る室内では、斎条さんが次の話を穏やかに始めてくれようとしていた。
「さて私の番ですね。私の3話目は地元にあるお地蔵様の話をしますね」
「地元の地蔵? はて、近くに地蔵なんて見たかな……」
 徹さんが疑問符を頭に浮かべているが、斎条さんは軽やかに話し始めた。
「案外気づかないものですが、結構お地蔵様っていうのはあちこちにあるもので、ここ一座にもいくつも存在します。この辺りで一番近い位置にあるのは妙林寺の野火用水沿いに立つお地蔵様ですかね」
 斎条さんの話しに赤羽先生が手を叩いた。
「ああ、思い出した。あれね~。たしかに分かり辛いとこだけど、確かにあったわね」
 ……ふ~ん、そうなのか。私はあの辺りはあまり通らないので、地蔵があったかどうかは全く分からない。ただ、あの辺りは木々が鬱蒼と茂り、昼間であっても薄暗く感じる寂しい通りだという事くらいは知っている。
「そう、そうです。私の次の話はその地蔵様の話なんです」