第51話 『ドッペルゲンガー』 語り手 石田淳

 いよいよ十年ぶりの怪談の続きが始まる。先陣を切るのはもちろん淳さんだ。この10年の間に彼に一体何があったのだろうか? 中学時代は少し暗い印象があり、伏し目がちに喋るのが特徴だったが、今の彼からは刺さるような厳しい視線が感じられる。
 それでも心の底に見え隠れする、凛とした何かは昔のままだ。
「やあ、ひさしぶりだね。僕がまた最初に話をするよ。徹と双子であるということはもう知っての通りだけどね。別に双子っていうか……誰にでもそれに近しい人はいると思うんだ」
 淳さんの意味深な口調に私は思わず聞き返した。
「と言うと?」
「この世界には自分に似た人物が5人いると言われている」
「あ、それなら何となく聞いたことがありますね。実際に他人の空似ってありますしね」
 私の言葉に、淳さんはニヤリと冷笑を浮かべた。
「そうなんだけど。その中でも特に異質なもう一人の自分……ドッペルゲンガーって知ってるかな?」
「ドッペルゲンガー?」
 どこかで聞いたことのある言葉だが、その意味まではよく知らない。
「ドッペルゲンガーはね……もう一人の自分なんだ。もちろん双子とかじゃないよ。世界に存在するもう一人の自分なんだ……」
 私は徹さんと淳さんを交互に見比べてみる。……よく似ている。まあ、並べば見分けられない程ではないけど。
「僕はね、徹と一緒にこの間見かけてしまったんだ。ドッペルゲンガーをね……」