ひらり、ひらり。

青空の下、薄紅の花びらが舞い散る。

緩やかに降る桜の雨。

小さな私は、うずくまり泣いている少年に声をかけた。


「わたし、こはる。あなたはどこのおうちのこ?」


返ってきた、小さな声。


「  」


よく聞き取れない。
けれど、夢の中の小さな私は、また話し掛けた。


「迷子になっちゃったの?」


私の問いかけに、少年はうずくまったままの姿勢で首をゆるく横に振った。

そして……


「ぼく、ひとりぼっちになっちゃった」


涙混じりの声が聞こえた刹那──


儚くも美しい景色が遠ざかっていった……