「ユイ、先に行け!!」



 頷いて、ユイは銃を取り出すと非常階段に回る。

 さっきの爆発で、アパートの外にも砂煙が舞っていた。

 視界がかなり悪い中、ユイは前に進もうとする。

 だが、誰かの気配を感じた。

 真っ直ぐに気配のする方に銃を向けて、ユイは目の前に立ちふさがる男に、低い声で話し掛けた。



「やっぱり、あんただったのね。私のことを狙っていたのは」

「私を撃てば、貴様の命もない」



 男が言った。

 そんなことは分かっている。

 自分の背後には、数人の男が銃を構えてこちらに向けている。



「こんな場所に潜んでいたとは知らなかったよ、ユイ。しかも、あんな優秀なナイトたちが一緒にいたとはね 」

「あの二人は、昔から知ってるのよ。向こうは私のことを知らないでしょうけど」

「あの二人のおかげで私の部下も、殆ど全滅してしまったよ。死神が味方についているあの二人だと分かっていれば 、私ももっと慎重にことを運んだのだが…」



 だんだん砂煙はおさまってきて、視界が開けてくる。

 さっきまで激しかった銃撃戦の音は、もう殆ど聞こえなくなっていた。



「…焦るワケよね。あと2日だもの」

「目障りな君には、一刻も早く消えてほしいんだがね。… 今日は出なおすとしよう。こちらの方がいささか、分が悪 い」

「ユイー!!!!」



 声のするほうを見上げると、レンが建物の三階の窓から身を乗り出していた。

 そしてレンはそのまま、こっちに向かって飛び降りる 。



「レン!!」



 着地と同時に刀を振り下ろし、その剣圧だけでユイに銃口を向けていた男たちは全員その場に倒れた。



「無事か?」

「えぇ」



 頷いて前を見ると、たった今までここにいた男の姿は消えていた。