【6】




 銃撃を避けながら、レンはエイジの方を見た。

 あっちも相当イラついているようだった。

 何故なら、この、敵の多さ。



「…ったく、キリがねェ…!!」



 タバコのフィルターをがじがじと噛みながら、エイジは呟く。



「いくら相手が俺たちだからって、これはちょっとやりすぎなんじゃねェのか?」

「ごちゃごちゃ喋ってる暇があったらさっさと動け、このタコ」



 迫りくる敵に刀を振り下ろしながらレンは言った。

 テメェに指図される筋合いはねェ、と悪態をつきながらも、エイジも次々に敵を倒す。



(…それにしても)



 レンは、辺りを見回した。

 確かに人数は多いが、向かってくる奴らはみんな雑魚ばかりだった。

 見るかぎり、名の知れた殺しのプロの姿はない。

 時計を見ると、午前4時を回っていた。

 だが後から後から沸いてくる敵に、いい加減息も切れてくる。



「…おい」



 レンは、エイジに声をかけた。



「あァ。俺もおかしいと思い始めてきたところだ」



 こういう時、長年連れ添ったこの相棒は助かる。

 全部言わなくても、ちゃんと意志が通じる。



「…だな」



 どうして、敵がいつまでたっても途切れないのか。

 もしかして「足止め」を食らっているのはこっちではないのか。



「…マズイな」



 エイジは、『ホン・チャンヤー』の本部ビルのある方角 …ユイが走っていった方へ向かう。



「ユイが危ねェ」



 レンも、エイジの後に続いた。

 案の定、敵の攻撃は激しさを増す。

 まるで自分達をここから動かさないかのように、行く手を塞がれる。

 やはり、こっちの考えは外れてはいない。