『リョウ!まだカズマと話してないの?』

「仕方ねーだろ、
今までバイトだったんだから」

『バイトって
今は他にやるべき事あるじゃん。
シフト誰かに変わってもらうとか
最悪さぼるとか
いくらでも方法はあるでしょうが。

何ちんたらしてんのよ!
このノロマ男!』

「むちゃくちゃ言うなよアキ」


電話口でギャンギャン騒ぐ声に
携帯を少し耳から遠ざける。

ついでにブルゾンを被った腕を伸ばし
時刻を確認するとすでに11時45分。

これから更に深まるだろう
寒さに対抗するように
その左腕をポケットに突っ込んだ。


街灯に照らされた俺が
携帯片手に歩くのは
バイト先から自宅までの帰り道の住宅街で

シンと静まり返った中
俺の言い訳の声だけが微かに響き渡ってる。


一方自分の部屋で
すっかりリラックスモードのアキは
何がゴクンと飲んだ後更に文句を続けた。


『家着いたら早速カズマと話しなよ?
結局今日はバカみたいに避け合って
学校で話せなかったんだから』

「でももう時間遅くねぇ?
また明日にするよ」

『今更何遠慮なんかしてんの?
キモチワルイ。
しょっちゅうお互いの部屋に
入り浸ってる癖に』

「だってよ……」


我ながら相当格好悪い。

でもケンゴのあんな顔を見ちまったから
かなりびびってるのが実際の所。

きっとそんなに深刻な事じゃないと
予測してるだろうアキは軽い口調で言う。


『本当普段仲いいと
こじれた時めんどくさいのね。
お互い変なプライドが邪魔して
本音隠してばっか』

「うるせーな
仲なんかよくねーよ」

『よく言うよ。
普段喧嘩とかしても
リョウからは絶対謝らないでしょう?

そもそも二人って喧嘩した事ある?
いつもけなし合ってるけど
結局は仲良いよね』

「だから仲なんかよくねぇって!
喧嘩なんかしょっちゅうだし」