歩は声を失う。



何かの聞き間違いじゃないかと、頭の中がぐるぐるする。



体から一気に体温が奪われたようなそんな感じだ。



真冬――――



歩にとって優しいお兄さんで、神隠しなどという物騒なものとは結びつかない。



第一聞いた事がなかった。



いや、真冬が意図して黙っていたのなら――聞いた事がなくて当然である。



歩は軽い目眩に襲われた。



信じたくないと言うよりは、信じられない気持ちでいっぱいだった。



“あんなにいい人が、そんなはずない”



歩はそんな事を思いつつも、もしかしたら……と思う自分に心底腹が立った。



心がどんどん疑心暗鬼に陥る恐怖を感じながら。