ケータイ小説 野いちご

運命みたいに恋してる。

エピローグ

 リズミカルに動く両足と、押さえても飛び出してくる鼻歌。


 カフェ・どりーむに向かうあたしの心と足取りは軽やかで、いまにも自己流変形スキップのリズムを刻んでしまいそうだ。


 空は快晴。綿菓子みたいにフワッフワの雲は真っ白に輝いて、手を伸ばしてつまみ食いしちゃいたくなる。


 午後の陽射しは眩しいほどに上々で、住宅地を行き交う人たちの表情を明るく照らしていた。


 今日は朝から、世界中のすべての人が幸せそうに見える。


 それぐらい今日という日は特別なのよ。だって……。


 可愛い可愛い甥っ子の大洋(たいよう)君の、記念すべき初めてのお誕生日なんだからー!


 最っ高に喜ばしいこの日、皆でカフェに集合して誕生パーティーだ!


 あふれる笑顔を浮かべるあたしの目の前には、いつも見慣れたカフェのドアがある。


 さあ、この扉の向こうで、天使があたしを待っている!


「大洋く~ん♪ あたしの天使ちゃ~ん♪ あなたの七海お姉ちゃんでちゅよお~~♪」


 バターンとドア全開にして店内に駆け込んだあたしは、その場でピタッと立ち止まって首を傾げた。


 ……あれ? 主役、どこ?


「お義兄さん、大洋君は?」

「父さんとお義母さんに強奪されたよ」


 テーブルを拭いていた拓海義兄さんが、なんとも言い難い表情で苦笑いした。


 ……やれやれ、また強奪戦が始まったか。お互い初孫だからしょうがないけどね。


 独り占めしようとするからトラブルになるのに。おまけにベロンベロンに舐めるように甘やかすし。


 だからキレたお姉ちゃんに、『しつけにならない!』ってふたりとも怒られるんだよ。


「一海、この前もキレて怒鳴ってたからなあ」

「お姉ちゃんも強くなったよね」

「うん。母は強しって本当だね」


 妊娠中はやっぱり体調を崩しがちでずいぶん心配したけれど、無事出産を終えて、お姉ちゃんは少し変わった。


 気持ちの面でも変わったけど、体質も変わったみたいで、ちょっとやそっとじゃ寝込まなくなった。


 この分なら、あと五人くらい産んだらスゴイ健康体になったりして。


 そう言ってお義兄さんと笑い合っていたら、ウワサの主のお姉ちゃんが奥からひょっこり顔を覗かせる。


「拓海、飲み物が足りないの。買い出しに付き合って」


「ああ、いま車出すよ」


「七海、準備お願いね。お母さんったら太洋にベッタリで、なにも手伝ってくれないのよ」


「わかった。いってらっしゃ~い」

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