「名前を聞いたけど、教えてもらえなかったんだもんね?」


「うん。そういう通りすがりの謙虚なヒーロー的なところ、さすが王子様だと思う」


あの後、お母さんに連れていかれた病院で、胃洗浄とかいろいろ処置されたっけ。


でもやっぱりお腹をこわしちゃったり、熱が出て寝込んだりして大変だった。


寝込んでいる間も、ずっと王子様のことが頭に浮かんで離れない。


熱と腹痛に苦しみながら、名前も知らない王子様のことを何度も思い出しては、自分を励ましていた。


やっと熱が下がって体力が回復してからも、恋しい気持ちはどんどん募るばかり。


どうしても王子様に会いたい気持ちを押さえられなくて、毎日あのドブ川に通いつめた。


今日、会えなかった。でも明日は会えるかもしれない。


きっと……きっと明日こそ!