数日後、お昼休み。

その日、日直だったあたしは、担任の先生にプリントの配布を頼まれ、それを預かった職員室からの帰り、テクテクと廊下を歩いていた。


「……あの、瀬川さん、だよね?」

「はい?」


すると、とても可愛らしい声で呼び止められ、振り返ると、やはり、小さく華奢で、お人形さんみたいなとても可愛らしい女の子が立っていて、遠慮がちにあたしと視線を合わせる。

あたしはもともと、わりと背が大きいほうなため、自然と見下ろす形になるのだけれど、彼女の可愛らしさは、見下ろしてこそ最大限の効果が発揮されるように思え、同性のあたしでさえも、上目遣いに思わずキュンとしてしまった。


「あたし、瀬川さんにお礼が言いたくて。この間、椎橋君に言ってくれたんだよね、彼女に謝りに行って、って。それ、あたしなんだ」

「あ、いや、余計なことを……」

「ううん、ありがとう。椎橋君に、瀬川さんにケーキを作ってもらうって言われて、実際のところ、けっこうヘコんでたの。嬉しかった」

「……そっか、うん」


ナオの、あまりのチャランポラン加減に、あんたの幼なじみはどうなってんの!と、ごくまれに元カノさんに八つ当たりをされることはあっても、お礼を言われるのは初めてのことで、なかなかリアクションが定まらない。