「お疲れ様です」

着替えを終えて、医局にいた神宮寺と疲れて眠る園田の背中と

他何名かの医局員に声をかけてから病院のドアをくぐる

途端に感じる風は、日に日に突き刺すような冷たさを孕んできている

思わず肩をすくめて、ストールを巻き直す

「寒」

ぱたぱたと少し足早に帰路に着いた10月

黒崎病院から徒歩5~10分

築30年の、外装だけはどうにか新しめに取り繕っているセキュリティにかけるアパートの

二階がしるふの一室だ

部屋は1LDK

研修医時代から住み続ける、すでに愛着が付いた我が家だ

周りから、特に隣町に住む姉から

もっと広くてきれいで、セキュリティのいいところに引っ越せと再三言われるけれど、

忙しさと面倒くささと少しの愛着が勝って検討段階で挫折すること早4年

その間に海斗と付き合い

お互いにお互いの家を行き来するようになってしまってさらに必要性を感じなくなった