窓ガラスに書かれたハートは一瞬で消えてしまったはずなのに、

対向車のライトが当たると薄っすらと浮かび上がり、

俺の胸を切なくさせた。




もう


あいつはいねぇのに…


隣にはあいつがいるような気がして、

信号で停まるたびに俺は左を見た。




笑顔が


目に焼きついていた。



笑い声が


耳に残っていた。




この車内には


まだあいつの忘れ物がたくさんあった。




ほんのり甘い匂いと


優しい空気。