* * *


「行ってきまーす!」

「待ちなさい、舞(マイ)!」

「え?」


お母さんに呼びとめられて玄関に向かう足を一度止める。振り返った先にはお母さんが少し呆れた顔で立っていた。


「お弁当!入れてないでしょ。」

「あー!」

「『あー!』じゃないわよ、もう。どうして舞はそんなにそそっかしいのかしらねぇ…。」

「お、お姉ちゃんと比べないでよ!」

「比べるとか比べないとかいう以前に本当に抜けてるというか…。」

「もーっ!お弁当ありがとう!行ってきます!」

「行ってらっしゃい。」


お母さんからお弁当を受け取ってあたしは玄関のドアを閉めた。


「うわっ!」


家から出てほんの数歩で小石につまづくなんて…


「はぁー…ツイてない。」


いつもあたしはこうなんだ。ツイてない上に、おっちょこちょいで…。


「舞ー!」

「紫音(シオン)!おはよー。」

「おはよ。ってか今、転びそうになってなかった?」

「…うぅ、それ、言わないでよ。」

「まったく舞はほんっとおっちょこちょいなんだからー。」

「わ、分かってるもん!」

「今日は何をしでかすやらー。」

「しでかすとか!人聞きの悪い!平和に過ごすもん。」

「…だといいけど。」