冷たい雨が妃絽の身体を濡らした。



「うぅ…」



雨が左腕の傷に入り込む度に鋭い走り、苦悶の声が漏れる。



浪士達が投げた短刀が妃絽の左腕を掠っていた。



意外にも傷が深く、指先から滴り落ちる血が点々と跡を残している。



その血の跡を辿って、浪士達が追って来るかもしれないという不安があったが、今は雨が降っている。



血の跡も雨水に流され、追って来るのは皆無だろう。



「こんな怪我してまで…。私は馬鹿だな…」



妃絽は自嘲気味に笑うと、髪が張り付く顔を伏せた。