翌日―――。



 朝から今日もアルページュのキッチンで一条の凛とした声が響いて朝礼が始まる。



「新作メニューが正式に決まった。各自レシピを確認しておいてくれ」



「あ、あのぅ……」



「なんだ」



 最近入って来た新人の従業員、成瀬が小さく手を挙手する。



「一条さんのレシピはフランス語で……僕、読めないんですけど……」



 何も知らないということは時に恐ろしい。


 従業員全員が新人に目を瞠って固唾を呑んでいた。