「ん……」


 頬に柔らかくて、温かなものを一瞬感じて奈央の意識が徐々に浮かび上がってきた。


 静かにドアが閉まる音が聞こえて奈央はハッとなって身を起こす。


「あ……れ」


 馴染みのある部屋だが、自分のマンションの部屋じゃない。


『そうだ、私あのまま一条さんと……』



 下着さえ身につけていない身体に布団を絡めて、昨日の情事を思い出す。


 何度も何度も自分の名前を呼び、自分もまた譫言のように一条の名前を呼んでいた。


 激しく身体を揺さぶって、一条の激情とも言える波を何度も受け入れた。


 その時、切なく眉を歪める一条の表情が浮かんで、奈央は再び身体の芯が熱くなるのを感じた。