翌日、僕たちはいつものように登校した。
ただ一つ違ったのは、僕たちがただの幼馴染から恋人へと変わっていたこと。

 このときの僕は少し…いや、かなり舞い上がっていたと思うし、
実際それをクラスメートに茶化されたりもしたけど。
僕は間違いなく幸せだ、と言えた。

「ケン、ご飯たべよー」

「今日弁当ないよ」

 恋人になっても、交わされる会話に何か変化があったわけではない。
ただ、カレンが僕を呼ぶ呼び方に敬称が消え去った。

「学食おいしくないんだよねー」

カレンが溜息をついているが、そんなこと言っても弁当がないものはない。

「コンビニ行く?」

「行く!」

他愛もない言葉を交わしながら、コンビニで適当な昼食を選んでいく。
僕はそんな小さな事に、昨日までとは違う幸せを噛み締めながら。
カレンもそうだったらいいな、なんて思う。

「あ、そーだ!今度の日曜日ね、観たい映画あるんだー。あと、もうすぐケンの誕生日だし、何か買い物しようよ」

「映画はいいとして、普通プレゼントとかサプライズにしない?」

「だって、ケンの趣味とか私に理解出来ないし。ケンの好きなもの選びなよー」

そこまで変な趣味を持っているつもりもないんだけど、要するにカレンは僕が本当に欲しいものを買いたいみたいだった。
といっても、そこまで僕も物欲があるわけでもないんだけど。

「じゃ、日曜迎えに行くよ」

「うん」

 二人で約束をして、日曜の予定を相談する。
付き合うことになっても、何か変化があるわけじゃない。
お互い、今までの空気を大切にしていると言えばいいのかな。
とにかく、そういう雰囲気だった。

 でも、それは決して不自然なものではなくて。
これが僕達の自然な付き合い方なんだなって、とてもしっくりきたんだ。