――…


「…っ」


気を取り戻し、目を覚ます。


あたし自身は寝転がっていて、天井は真っ暗で何も見えない状態。


とりあえず状況を把握しようとまわりを見渡すなり、突如あたしは絶句した。


「なに…ここ」


あたしの視線の先には何れも漆黒の闇。

むしろ、目が見えていないんじゃないかとも思う。


え…もしかして本当に見えなくなった?


しかし、目の前に手を持ってくると、暗いながらもいつもの手のひらが見える。


気温…も至って普通で、暑くなければ寒くもない。


ただ、闇の中にいる自分が思うことは、“怖い”という2文字だけ。


政宗から貰った着物を身に纏い裸足で色んなところを走る。


でも暗くて東西南北も分からず、今、この時に後ろから何かに襲われるかもしれないという不安を抱き始める。



どうしよう…!



今にも泣き出しそうでいると、遠くから叫び声がして、ビクッと身を震わせる。



「い…愛!愛っ!」


この声は…誰?

政宗でも小十郎でもない…。


聞き覚えはないけれど、何処か温かみのある声だった。


あたしは何も考えず、引っ張られるように自然と声のする方に走る。



息切れることもないことに吃驚する暇もなく、無我夢中で走っていると。


「あ…っ」


小さな光が見えた。


逆光してよく見えないが、そこにはあの声の主だろう、長身の男性が立っていた。


しかし、近づくにつれその男性がどんどん消えていく。


その状況がよく分からず驚きを隠せなかったが、何も考えず目の前にある明るい、眩い光へと思いきり飛び込んだ。




……っ――…