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カイン国を出て数日、ついにギオウ国へとたどり着いた。


「二人には申し訳ないけど、少しギオウ国の王に挨拶してってくれない?」



ギオウ国に着いてすぐセキが口を開く。




「そうだな、勝手に国境を越えるのは良くない。争いの火種になるからな」


争いの火種………
今のカイン国で戦争になんかなったら戦争を仕掛けたほうもカイン国のみんなも命を落とす。


それだけは避けなくちゃ………


「ならギオウ国の国王に会おう」


ギオウ国の王様も砦の魔女に困っていたから私をさらおうとしたわけだし、怖い事にはならないよね。


「……………お前ってやつは……」

「…へぇ……」



エルシスは驚いたように、セキは感心するような顔で私を見る。


…え、何だろう??
私、変な事言ったかな??




「未遂に終わったけど巫女サマ、さらわれかけてるの覚えてる?そんなあっさりとギオウ国の国王に会って大丈夫なの?」


「だってギオウ国の王様は困ってて仕方なく私をさらったんでしょ?だとしたら仕方ないよ、王様には守らなきゃいけない国があるんだから」


エルシスを見ていて思った。
エルシスも王子として守らなきゃいけない国がある。
その為に傷ついても戦わなきゃいけない。



「王様はなにをしたって国を守らなきゃいけないんだもんね。その重みを、私には完全に理解することは出来ないけど、それに近い思いを私は知ってるから…」



巫女として守らなきゃいけないこの世界の未来。


「やり方は悪かったかもしれない、でもきっと手を取り合う事は出来るよ。今は戦争なんてしてる場合じゃないし、アルサティア全体の危機なんだから」


皆が手を取り合わなきゃ魔王になんて敵わないと思う。


「……鈴奈って本当に巫女様なんだね」

「うん?それって誉めてるの?けなしてるの?」


…セキが言うと嫌味にしか聞こえないのはなんでだろう。



「いやいや、本当に巫女サマの事見直したんだって。偽物ならとっくに逃げ出してるしね」

「…セキ………」



どこかセキの眼差しが優しい気がした。