職員室に、坂下先生が戻ってきた。



うちのクラスの余合が授業中にぼーっとしていると、多くの先生から苦情が寄せられたため、指導室に呼び出しをかけた。



その割には、戻って来るの早すぎやしないか?


そう思っていたら、坂下先生が僕に耳打ちをした。


「蒼先生、ここだけの話ですが…余合さんと何かありましたか?」


何かと言われても、最近はほとんど話していない。



思いあたることといえば、バレンタインデー。


だけど、坂下先生に本命チョコ貰ったなんて言う必要はない。


「いえ、特には…。

ところで、なぜ僕が?」


とぼけることにした。



「何となく…です。

改善されないようでしたら、蒼先生の方から余合さんに話をしていただけないでしょうか?」


坂下先生はそう言い終えると、自分の席につき、書類にペンを走らせた。



もしかしたら、坂下先生は感づいているのかもしれない。



僕と余合の間に、何かあるということを…。