入学して半月ほど経ったころ、一年生を対象に山で合宿をする。


行進と持久走、飯盒炊爨やオリエンテーリングも行った。





合宿の夜、家族が書いてくれた手紙を読み、その返事を書くことになっている。


両親がいない私の家族といえば、後見人となって父の会社を継いでいる叔父。


坂下先生は奔走してくださったけれど、叔父が私に手紙を書いてくれることはなかった。


坂下先生の勧めで、叔父に手紙を書くことにしたけれど、何を書いたらいいのか思いつかない。




今年の初めから、叔父一家と私は同じ敷地内に住んではいるけれど、顔を会わせることは殆ど無い。


叔父たちは母屋に住み、私は今まで住んでいた母屋から離れの小さな家に移った。


口さがない人たちは


「会社も家も乗っ取られた。」


と言う。



便箋にまだ一文字も書けずにいると、蒼先生が外へ連れ出してくれた。





蒼先生が手にしている懐中電灯を頼りに木々を抜け、広い草原へ出る。


街中では見ることができない程、たくさんの星が輝いていた。


「今にも降りだしそう…。」


思ったことを、気がついたら呟いてた。


「雨が降る気配、ないけど?」


「違います、星のことです。」


私は笑う。



すると、蒼先生は


「やっと、笑った。」


そう言って、微笑んだ。