カーテンの向こうから、ドアが開く音がし、直後に


「蒼先生、いらっしゃいますか?」


という、坂下先生の声がした。



「はい。」


僕はベッドを仕切るカーテンの隙間から顔を出した。




坂下先生は少し驚いた表情で、僕にカーテンの外に出るよう指示をした。


そして、小声で注意する。


「女子生徒が休んでいるベッドのカーテンを閉じたまま、侵入しないでください。」


侵入って…、そんなイヤラシイ表現されたくない。




反論しようとしたら、


「噂を立てられてからでは、遅いですよ。」


「あ…。」


僕の教員生命が、ヤバイとでも言いたいのか。


いや、そんなコトよりも…


「余合が傷つきますね、気をつけます。」




坂下先生は頷くと、余合がいるベッドのカーテンの外から声をかけた。


「余合さん、起きていらっしゃいますか?」


「はい。」


高音の可愛らしい声が聞こえた。



「ご自宅までお送りいたしますので、支度をして校門前にいらしてください。」


坂下先生は、車を校門前に移動させるためか、保健室から出て行った。