あー、もう最悪。


何なのよ、アイツ。

てか、何であたしが苛々しなきゃ駄目なわけ?


意味わかんないっ。


普通さ、かくまってもらったんだからお礼のひとつくらいあってもいーんじゃん。


それなのにさー。

足音をダンダンと立てながら、マンションに入った。


その時だった。


「あ、仁奈おかえりー」

「あれ? ママ。何してんのー?」


1階のエントランスを歩くあたしに、部屋のドアを開けたままのママの姿が見えた。

その隣には、凄く綺麗な女の人。

ペコっと会釈をすると、にこやかな笑顔が返って来た。


「お隣にお引越しされてきた、椎名さんよ」


ふーん、とママに相槌を打ってから


「あ、はじめまして。有賀仁奈です」


と、その綺麗な女の人に挨拶をした。