小さい頃から一緒にいた…。


 真っ暗な世界で一人で泣いているときも、必ずハルが私を見つけてくれた。


 二人で育ってきたから、ハルは「お前は俺の妹だ。」って言ってくれるけど…私はハルのこと、兄としてなんて見れないよ。


 死神のくせに優しくて、私のことを気遣ってくれるハルが…ずっと好きだった。


 いつからかなんてわからないけれど、たぶん生まれた時からずっと…。


 でもハルは、気づいてくれない。


「妹」だなんて言ってさ。


 誰よりもハルの近くにいるのに触れることもできなくて…。


「妹」という名の鎖に縛られている私は、誰にも助けを求めることができない。


 ハルのバカ。


 こんなにいつも一緒にいるのに、どうして私の気持ちに気づいてくれないの?


 ハル…苦しいよ。


 …ハルは、人には感情なんて見せない。


 だから、自分の心の中にある感情がなんなのか、ハルはわかってないの。


 不器用なんだよね。


 自分は人に優しくしてるのに自分がされるのは苦手で…。


 でも、ハルは世界中どこ探したってどこにもいないような、本当に優しい人なんだ。


 人間を連れて行くのもイヤ、人間の悲しそうな顔を見るのもイヤ。


 死神としては失格だけど、人間より人間らしい死神、それがハル。


 私は、誰よりもハルの傍にいた。


 だから、誰よりもハルのことをわかっているし、大好き。


 魔王様よりも…ね。



今回、ハルは一人の少女の仕事を受けることになった。


どうせまた、できるだけ早くおわして一人で心を痛めているんだろう。


…でも、なぜか胸騒ぎがする。


 ハルに何か良くないことが起きるかもしれない。


 私も早くおわしてハルを手伝わないと。


 私はというと、一人の人間の男の子を任せられた。


 年齢は五歳。死因は、交通事故。


 …まだ子供なのに、かわいそう。


 私はこれからその男の子を観察しにいかなければならない。


 やっぱり、この仕事嫌だな。


 でも、ハルが頑張ってるんだから私も頑張らなくちゃ。


 私達死神でも、子供など若い子たちを連れて行くのは、とてもつらい。


 みんな、イヤだって言ってる。


 でも、仕方がないんだ。


 これが私達の定めだから。


 人間には化け物と言われ嫌われる。


 ナイフで襲われても、体には何もない…けど、心はすごく痛い。


 人間になりたいなんて思わない。


 だけど、人間がうらやましかったりするんだ。


 いろいろな感情を持っていて、自由にそれを伝えることができるから。


…もし、私とハルが人間だったら…、こんなつらいことしなくてよかったのかもしれないね。


 ねぇハル。


 人間と死神あなただったら、どっちで生きることを選ぶ?


  私は…ハルがいる方を選ぶよ。