「人間」…それは僕達より後に生まれ、先に死んでいく生き物。




 僕達「死神」はその短い寿命の終わりを見届けて…あの世界へ連れて行く。




 そぅ、人間でいう「天国」ってやつ。




 連れて行くことが僕達の使命であり、運命なんだ。




もし、「神」というものがいるなら、人間の魂を生まれる前の場所へ連れ戻せってことなのかもね。




 僕達は人間でいう「魔法」みたいなものが使えるし。




僕達は人間に似ている。




 外見だけ見れば、普通の人間と何も変わらない。




 ただ…歳をとらないだけ。




 人間は年をとるたびに老化していくけど、僕達は何百年、何千年生きようと変わらない。








ここは、僕達の世界。




 天国でも、人間界でもないくらい闇の世界。




 そこで…僕達は生まれた。




 誰に作られたのかも誰に命令されたかもわからずに、僕達は生きてきた。




「ハル?何ボーッとしてるの?魔王様が呼んでるよ。」




声を張り上げて、僕の名前を呼ぶのはユナ。




 気づいた時から隣にいて一緒に人間を連れて行ったりする。




 赤く長い髪をなびかせて走るその姿は、まさに人間の少女そのものだ。




魔王様というのは、僕達死神の「父」的な存在であり、死神界の「王様」のようなお方だ。




 僕達をかわいがってくださり、「仕事」をくださる。




 黒いひげを長く伸ばし黒いマントを羽織っている姿は、魔王そのものだ。




「魔王様。ハルを連れてまいりました。」




「おぉ、来たか。ハル、次の仕事じゃ。ほれ。」




魔王様から、一人の少女が写っている写真をいただいた。




 真黒な長い髪のどこにでもいるような人間。




「いつも通り、ちゃんとやるんじゃぞ。」




「「はい。」」




僕達は返事をして、王宮から出た。




「私、今回別の人間だって。ハルは女の子でしょ?こっちの死因は病死か。そっちは?」




「…交通事故。」




「そっか。じゃあね。」




ユナは自分の仕事に行った。




 僕は、死神の仕事が嫌いだ。




 連れて行くときの人間の顔が頭から離れなくなるから。




 …またひとつ、あの顔が増えるのか。




ユナも強がってはいるけど本当は嫌みたいだ。




 本当はユナにこんな仕事、やらせたくない。




あいつは、妹みたいなものだから、僕だけがこの仕事をやればいいと思う。




けれど、あいつに そんなことをいうと「二人だから、つらいことも半分なんでしょ?ハルはそんなこと考えなくていいから。」って怒られる。




 なんだかんだいっても、根は優しい奴だ。




 表に出すのが苦手なだけ。ばかなやつ。