「祥子……」

掠れたその声は祥子の名前を刹那げに発した後、激しい吐息だけになり、やがてそのスピードを緩めて寝息に変わる。

隼人の夜の過ごし方は、今までの誰よりも優しかった。

祥子の躯を這う指先も舌先も、まるで硝子細工を扱うようで……。
祥子は目を閉じて、いつ敏感なところにそれが触れるのかを待つだけで感じた。

ただ、今までの誰かと少しだけ違うのは優し過ぎる愛撫だけじゃなかった。

『私』を愛してほしいのに。

隼人の意識はいつも祥子を通り越しているような気がして、その不安の実態が何なのかも見当がつかず、抱かれた後に言葉に表すことの出来ない感情が快感の余韻と混ざり合った。

その快感と不快の混在に引きずられるように眠りに就く。