希龍くんに会わないのは、避けられてるからとかじゃない。あたしが、安田さんの家に行かないから。

親が遅い日も、安田さんの家には行かずに自分の家に帰ってきていた。

1人にならないように、春斗も一緒に。


「ごめんね、いつも。」

「いえ、家帰っても暇なんで。」


あたしが謝ると、春斗は決まってこう言った。

あたしが安田さんの家に行きたくないと言ったとき、春斗は何も聞かずに「分かりました。」とだけ言った。


「美波さん、俺明後日ちょっと用事があって迎えに行けないんですけど。希龍さんに…」

「希龍くんには言わないで。」

ダメだよ、希龍くんは。

あれから話をしてないどころか、会ってもいない。気まずくて顔を合わせられない。


「…すいません。それは出来ないっす。」

初めて、春斗が首を縦に振らなかった。