(一)


朝っぱらから、ふゆっきーの悲鳴が木霊した天神学園だった。


まあ、無理もない。


「わ、わわたっ、そ、その、か、顔っっ!」


冬月の愛し人の顔がボロボロになっていれば、悲鳴をあげたくもなる。


眼帯し、湿布やガーゼまであてがい、詰襟学生服でなければ、渉とは分からないほどの凄惨さだ。


「えっと……」


「わたるんはん、ぼ、僕の大好きなわたるんはんが、こないに、あ、あぁっ、き、傷っ、こんな痛い傷が、いっぱ、いっぱいいぃっ!」


発狂した狐面の下は涙でも流していることだろう。渉にすがりつき、人目憚らず、冬月は声をあげた。