「それがまた、
リバなボーイッシュ系でさー。」

親友の絵麻<エマ>は
先日の(レズ)ビアン・パーティで
知り合ったコの話を大好きな
カクテルそっちのけで語っていた。

彼女に自論の"愛"を語らせると
止まらないから面白い。


「楽しそー・・。今度誘って。」

「"ネコ"が増えすぎ! ダメ。フフ」


土曜の夜のショットバー。
元・倉庫で天井が高く、音響も最高。

女同士のHなバカ話は
マズイ恋バナよりずっと楽しくて
男が入り込む隙間なんかなかった筈。


「こんばんわ、2人なの?」

「「 ・・・。」」


突然現れてその空気を裂いたのは
図々しく、勝手に同じ席に着いた男2人。

ガラステーブルの上の彼女の手。
やっぱり親指だけ折ってる。

"ナンパ道4級"に認定か。
彼女のサインにクスリと笑った。

「・・どーも。」

その絵麻は軽い挨拶で嘲笑い
サクサクとスナックを齧りながら
あたしと彼らを交互に見てる。

それもその筈、1人は見知った顔で。

彼女がそうする理由は、
あたしが男にどうアレルギーを起こすか
興味深々だったのだ。

当のあたしはその"年下男"の
責めるかの視線に舌打ちしたい位なのに。

彼の相方だけがあたし達の間の
気まずい空気に気付いてない。

ふと
"彼の味"を思い出そうとしてる唇。

はっと目を反らし
脳内の海馬へ至急の作業中止命令。
人知れず、いつもの自分に戻るのだ。


「公務員がヤバくない?
こんなトコで飲んでちゃ。」


女同士でも気軽に立ち寄れる、
クラブっぽい雰囲気ではあるが

店員は中東系、
経営者がヤバ目なら常連も同じ。


「大した事ないよ。」


年下男は"子ども扱いするな"
みたいな、フテた横顔。

ムサイ連れと並んで座ると
彼のその容姿端麗さが目立つ。

本当には心配していないあたしは
シラけた様に煙草に火を着け、
確かに彼にそう伝えたのだ。


「悪いけど、お相手はもういるから」


外で飲んでいる時は別
今は、あたしもココの客なんだから。

出来ればウチの店にだって・・特に、
カウンター席には座って欲しくない。