結局その日、美樹は部屋から出てくることはなかった。
 お店も営業することが出来ずに、喫茶店『free‐time』の看板は店の中にしまわれたままだった。
 雨は1日降り続け、夜になってもやみそうにない。


「どうだった、悠?」


 食事を持って美樹の部屋に行った悠に、彩が聞いた。


「反応なし、だね」


 トレイに乗せたサンドイッチに視線を落とし、悠はため息をついた。


「あーもう! あのキザ野郎、マジでムカつく!!」


 右手の親指を噛みながら、彩はイライラと呟く。
 そして、庭に続くテラス戸から外を見て。


「今日も、かよっ!!」


 吐き捨てて、彩は立ち上がる。


「ちょっと待て・・・って、もう行ったか」


 軽くため息をついて、諒も立ち上がった。
 昨日と同じ、アヤカシの群れ。
 相手はどうやら、こっちの体力が回復しないように、毎晩人海戦術を仕掛けて来る気らしい。