車を降りると、塀の向こうから、犬の吠える声が聞こえた。

塀の近くには家が一軒あるだけだ。

家の向こう側には原っぱが広がっていて、真ん中に大きな木がポツンと生えていた。


圭吾さんは、携帯で誰かに電話している。


程なくゲートの横の扉が開いて、誰かがこっちにやってきた。


「やあ、いらっしゃい」


あれ、要(かなめ)さん?


現れたのは、圭吾さんの父方の従兄の要さんだ。

お仕事は警察官だけれど、私服ってことは非番らしい。


「こんにちは、要さん」

やきもち妬きの圭吾さんを気にしながら、わたしは挨拶をした。


「ペットを飼いたいって言ってただろう?」

圭吾さんがわたしの肩を抱きながら言った。


「ここは何?」


「飼い主が見つからない動物を一時的に保護する施設だよ。ペットショップで売れ残ったのとか、一般の家で生まれて引き取り手が見つからないのとか。羽竜の遠縁が運営しているんだ。要は、非番の日にボランティアで手伝っている」