桜の蕾がほころび始めた春休みのある日――


圭吾さんがいきなり『出かけよう』と言い出した。


圭吾さんとわたしは、母方の従兄妹同士。

わたしの親父が海外赴任中なので、わたしは一年前から圭吾さんの家で暮らしている。


「どこに行くの?」

わたしが聞くと、圭吾さんはニッコリと笑って『秘密』って言った。


うーん……

こういう時って、必ずサプライズがあるんだよね。

今回は何かな?


「ああ、志鶴。今日はジーンズの方がいいよ」


あら、珍しい。


いつもの圭吾さんは、わたしに、『いかにも女の子』って格好ばかりさせるのに。

ジーンズならいっぱいあるわ。

この家に来る前は、ジーンズとTシャツと制服しか持ってなかったくらいだもの。


クローゼットからお気に入りのリーバイスを引っ張り出す。

上には長めの丈のチュニックブラウスを組み合わせた。


「これでいい?」