腕の中の呉羽ちゃんが静かに涙を流す。

過去というしがらみは時に人を過去にとどめてしまう。

彼女はそのしがらみからいま解放されたのだろう。

だけど、この細い体を今度は誰が支えていくのだろう?

そんなことを考えていたら心の底にふっとある感情がかすめた。

“ぼくが支えてあげたい”

そんな自分の感情に驚く。

自分のことは冷めた人間だと思っていた。

そんな自分がこんな感情を抱くなんて。

・・・・・だけど無理だ。

ぼくには彼女に言えない秘密がある。

そんな僕が彼女をささえるなんてきっと無理に等しいのだろう。