今日は10月31日。
子供たちが仮装して町をうろつくこともない日本では、あまり関係のない日。
少なくとも高校生の俺、須坂翔(Sho Suzaka)はそう思っていた。


だがどうやら相方は違ったようだ。


「ハッピハッピハロウィーン★お菓子くれないと悪戯するぞー」

「…何の用だ」


マンションの一室を借りて一人暮らしをしている俺の部屋に同級生のバカが1人。
手には大きな紙袋。なにやら大量的に入っている。


「冷たいなー。今日は待ちに待ったハロウィンじゃないか!」

「待ちに待ってなんかない」



バカの名前は相沢一馬(Kazuma Aizawa)。
ルックスは上の上。
成績は置いといて、運動神経は抜群の学校の王子様。
だが残念なことに


「おまっ、こんな素敵な日を待ってないだと!?」

「何が素敵なんだ」

「魔女っ娘コスが見れるんだぞ!?」


変人中の変人なのである。


なぜこんな奴が学校の王子様なのか、すっげぇ知りたい。
やっぱあれか。皆、ルックスよければなんでもいいのか。

ちくしょう。めちゃくちゃムカつくぞ。
今、平凡男子な俺は当然のごとくこいつの引き立て役になっているであろう。
俺が女だったら間違ってもこいつだけは選ばない。


だが、俺は間違えたのだ。
人生最大の黒歴史があるのだ。


「さぁ俺の可愛い彼女よ。魔女っ娘になっておくれ!」

「誰が着るか」


人生最大の黒歴史。
それはきっと俺がこいつの彼女になったことだ。


もちろん俺はゲイではないし、今だって可愛い女の子みるとドキッとする。
こいつの、ハイテンションで可笑しな告白に流されて付き合ってしまったわけで。

まぁ引いたりはしなかった。
こいつが両方いけるってことは。
いきなり「セーラー服着てくれねぇ?」って言われたときは流石に引いたが。