「どうも」 

「あの・・・・、服がどうかしたんですか?」


 私はわざと聞いてみた。
「いや、別に」

 そう答えると、浅村は顔の隅に少しばかりの残念さを浮かべながら私の前から消えて行った。 

 そんな背中を見て、私は可笑しくて大声で笑いこけたい気分になった。


「馬鹿野郎。お前の魂胆なんかお見通しなんだよ」

 玲子は、昨日の朝イチで同じ店から同じ服を購入し、すぐに二度洗濯機に掛けていたのであった。

 それよりも奇妙なことが夕方のニュースで流れた。 殺害された男は下半身裸であったが、何故だか陰部だけが切り取られており、それが付近の何処を探しても見つからないという。警察は、続けて90人体制を崩さずに捜査する方向だということであるが、そのニュースを聞いた私も首を傾げるしか無かった。 

 捜査は難航した。しかし、現実問題として隣室の住人が死体で見つかり、階下の住人が行方不明なのである。隣室の住人を殺した犯人も捕まっていないのに、今度はアパートの住人ではない男が変死体で見つかった。捜査本部としてもこれが同一犯人なのか別々の犯人なのか、どちらとも言えない状況に苦悩していた。