「ただいまー」




拓人とホームで別れて、

1時間後に家に着いた。


可愛いレンガの門を通って、

小さなステンドグラスがはめ込まれた玄関扉をあけると、


夕御飯のいい匂いがしてきた。




リビングに入ると、カウンターキッチンの向こうで、

ベージュ色のエプロンをつけたお母さんが料理をしていた。



「おかえり。遅かったから心配しちゃったじゃない。


遅くなるときは連絡しなさいね」




小柄でかわいいお母さんがそう言って微笑んだ。

家中がカントリー調なのは、お母さんの趣味だ。



小さい頃は何も感じなかった小物たちが、

最近はかわいらしく思えて、

お母さんは趣味がいいと感じるようになった。




「あっ!」





私はうっかりしていたことに気づいた。





「どうしたの?」


「アドレス聞くの忘れた・・・


帰りの約束も・・はぁ・・・」




拓人の部活のことで、すっかり忘れていた。



「また、明日声かけるか。。。」



お母さんは、器に料理をよそりながら、


にこっと笑った。



「なあに?彼氏ができたの?ふふっ」




「彼氏じゃないよ。好きな人ができたの」



私はひとつつまみ食いをした。



「ちょっと、こら!お箸でちゃんと食べなさい!」



ぺしっとおしりを叩かれて、


「はいはい」と言いながらリビングを後にして、


階段を上って自分の部屋へ着替えに行った。