夜風が少しの冷気を含ませ、駆ける和哉の頬を撫でる。

秋が近い。

和哉は、雪乃のもとへ急ぐ中、季節が移り行くのを肌で感じた。



目的の通りで荒い呼吸のまま辺りを見回すが、雪乃どころか人の気配がまったくない。

雲に隠れがちな月明かりだけが頼りの静かな道で、不安が押し寄せる。



せめて市哉に事情を聞いてから来るのだった…−



そう悔やんだとき、足音が聞こえた。

目を凝らすと、淡く浮かんだ女性らしき細い影が、

「…川端先生?」

と和哉を呼んだ。