次の日。

「……まさか俺が変態になるとはな」

屈辱だ。




きっと部活に行けば、部員全員が俺を軽蔑的な目で見てくるに違いない。


「はぁ……」

「おはようございます、東藤さん」

「気配を消して挨拶するな」


慣れたけどな。


「どうなさいました。元気がないようですが」

「昨日のことだ。有栖川に変な誤解をされたせいで俺は変態になったんだ」

「あれなら説明しましたから大丈夫ですよ」

「そうか、大丈夫か。……って、はぁあ!?」


嘘だろ、昴がいいことをした!?


いや待て俺!


こいつのことだ、きっと変な説明をしているハズだ。


「どんな説明をしたんだ?」

「私が東藤さんを襲おうとしているのを防ぐため、やむを得ず押し倒す結果になった、と」

「……本当に、そう説明したのか?」


コクリと頷く昴。


「……いいのか、それではお前が変態になるぞ」


「東藤さんが嫌な思いをすることに比べれば、どうでもいいことです」




どうしてだ。

どうしてそうやって、ドキドキするようなことを言うんだ。

こいつは迷惑な変態なのに、どうしてドキドキするんだ。



「…………」

「東藤さん、顔が赤いです」

「お前のせいだろ」

「私の?」

「バカめ、自覚がないとはタチが悪い」

「?」


なんて腹立たしい。

こんなやつにドキドキしてしまうなんて。




「……東藤さん」

「なんだ」

「気になっていたのですが、私のこと呼び捨てになっています」


「……あ」


夢でスバルスバルって聞いていたからか、うつってしまったらしい。




あれ、夢といえば。

そうだ、昴に本当に兄がいたとなれば、あの夢は俺の記憶。

ということは、あの約束も……。




「…………」

「東藤さん?」

「…………」


「……私の前で放心とは、いい度胸です」


















――ちゅ




ちゅ?




「キス、いただきました」

「……なっ、な!」

「戸惑う姿も可愛らしいですよ。次は体をいただきたいのですが」

「やらん!馬鹿者が!」

「ならばもう一度キスを」

「誰がするかアホ!今のは事故だ!ノーカウントだ!」

「顔が赤いです」

「黙れ!」