私は仕事大好き女。だから彼は時間に余裕のある女性と巡り会った。したがって私たちは別れることになる。

それを悲しいこととは思わなかった。お互い求めあうものが違ったのだから。でも…今夜から誰の為にご飯を作ればいいのか、私はそんな悩みを抱えていた。

自分だけなら、ご飯、味噌汁、梅干し、冷や奴…そんなところで十分だ。これが誰かのために作るとなると、ビーフストロガノフ、ロールキャベツ、焼ナスパルミジャーノ…カタカナ料理をいっぱい作ってあげたくなるし、私も美味しくいただける。

仕事で疲れていても、ご飯を作ることを手間だとは思わなかった。誰かのためにご飯を作るのは楽しかったから…。

仕事帰りの駅の改札口、押し寄せる人の波に揉みくちゃにされながら外に出た。もうヘトヘトだ。ご飯を炊くのも面倒い。もうコンビニ弁当でもいいか…。

そんなことを考え、トボトボと歩き駅から離れる。しばらく歩くと公園でテントを張る若い男性の姿が目に入った。この公園での宿泊は禁止なのに、知らないのかな。教えてあげた方がいいのかな。

「あの、もしもし」

「…うん?」