私の目の前には、一生涯“印税”生活だろうなぁ...と嫌でも想像出来る男。



印税で買った一軒家で打ち合わせ。


それで良かったハズなのに。



そのほうが、この作家的にも楽なはずなのに。




『編集さんが大変でしょう?

だから、俺が行ってやるよ』




別に望んで無いですけどね。


あなたがココ、
集豪社Shuugoushaビルに来ることなんて。



むしろ、来て欲しく無かった。




「相変わらず、編集さんの机は汚いねぇ」



「あ、あんまり見ないでください」



「そう言われるとねぇ...あっ、俺のデビュー作じゃん」




机の上に並べられた、彼の文庫本。



若手の小説コンテストでいきなり優勝してデビューすると、うなぎ上りに人気は伸びていき、今では集豪社には欠かせない人間になっている。



この前出した推理小説は、発売の一週目で60万部。


来月に発売する恋愛小説は、予約分だけで100万部を超えている。



今までの小説家とは違い、彼には固定されたジャンルが無い。



それだけに、幅広い層に親しまれている人気小説家。



そして、私がこの世で
一番嫌っている相手でもある。