幸せな時間(とき)は儚く一瞬で消え失せた。

いつまでも続くと信じていた幸せ。

いつまでも微笑んでいてくれると思っていた女性(ひと)。


母さん…何故…?

何故何も言わずにいなくなったんだ?

何故俺と父さんを捨てたんだ?


桜吹雪の舞い踊る中、その花よりも綺麗に微笑んで、フワリと良い香りと共に俺を抱きしめた優しい母さん。

『龍也…入学おめでとう。あなたが立派に成長した事を誇りに思うよ。』


入学式の間ずっと目に涙を溜めて俺を見つめていた母さん。


『…お母さんのところへ生まれてきてくれて―…ありがとう。』


あれは心からの言葉じゃなかったのか?