詩織が過呼吸になった。


親の話は、出来るならしたく無かったけれど、挨拶は行かなきゃいけないだろう。



でもそれは、詩織の辛い過去を引き出すことになる。



ベッドでぐっすりと眠っている詩織。



いつも笑顔な詩織は、小さい時は笑顔が一つも無い女の子だったそうだ。



『詩織から言われたの。

慧に私の過去言っておいてって』




苅谷が退院した直後に、苅谷から聞いた。



ちょうど、詩織と付き合い始めた頃。



苅谷が退院後の報告をしてきた時だった。




『私と詩織

教会に一時預けられて、育ってるの』




その言葉は、俺にとって衝撃的だった。



幸せなオーラを振り撒く詩織に、そんな過去は想像出来ない。




『私と詩織、預けられたら年数は違うけれど…


約3年の間、ずっと一緒にいたの』




苅谷はそういうと、当時を思い出しているのか、静かに笑った。




『詩織の過去を聞いて、詩織から離れていかない?


もう、詩織を独りにしないで欲しいの。


あなたなら、平気だと思うから話すの。


いいわね?』