「いらっしゃいませ」



──今日も私は、一人バーへと足を運んでいた。


お目当ては美味しいカクテル…じゃなく、それを作ってくれる目の前の美男子。



シェーカーを振る長い指と、真剣な眼差しが素敵な彼。


話し掛けたことなんてない。


ただ見つめるだけで胸がキュンとなる、ただの憧れの人。




「今日は何にします?」


「……“セックス·オン·ザ·ビーチ”」



そう答えるのもお決まりだ。


絶対に女性は選ばないだろう名前のこのカクテルを頼むことで、少しでも私を彼に印象付けてやろうというささやかな願いを込めて。