本の独特な香りが部屋中に漂う。

“天と地の魔術”、“鏡と魔法陣”、“使い魔教本”…………



「うわぁ、どれも字が読めないよう」

本のタイトルを見て、これでもないと積み重ねていく。

佐久間さんは一冊の本をパラパラ捲ると難しい顔をした。


どれもエシャルの文字だから、みんなには読めないのね。

あたしが人間界の文字を、すらすら読めないのと同じだわ。



「本当にあるわけ?
すずが探し求めてる本」

「もちろん、ちゃんとエシャルから持ってきたもの」


返答を聞くと、深いため息を零す恋千くん。



たった今あたしたちは、妖精に関する本を探している。

まずは妖精がどんなものかを知るべきでしょう?

ある程度、知識を入れておかないと。


そこであたしがエシャルから持ってきた本の中から、役立ちそうなものを選別しているのだけど……。



「俺もう飽きちゃったなー」

恋千くんは、本を投げてあたしのベッドに寝っ転がる。

読めない字と向き合うのには、相当な集中力が必要みたい。