「ユリちゃん、早く行かないと遅刻しちゃうよ」


「わかってるよ、おばあちゃん。 いってきま~す」


「いってらっしゃい~」


いつもの平和な朝。

私の名前は楠田ユリ(くすだゆり)。
この名前はおばあちゃんにつけてもらった。

私には両親の記憶はない。
生まれてすぐ私は、お父さんのおばあちゃんの家に預けられた、らしい。

その理由を聞いてもおばあちゃんは教えてくれなかった。

何でかわからないけど、悲しい顔をして首を振るだけだった。
たぶん私は両親に捨てられたんだろうと思った。

でも、おばあちゃんはそのあとこう言ったんだ。


「ユリちゃんは、何も思い出さなくていいんだよ?」


それ以来、両親の事は何も聞かなくなった。

おばあちゃんは何かを隠してる。
でも、聞いちゃいけない気がしたから。

私は何かを忘れてるんだろうか?