次の朝の目覚めは良かった。


師匠の家で迎えた初めての夜は
思いの外よく寝れた。


と言っても
今日から弟子である私が
師匠のためにご飯を作らねばならない。


弟子としての初仕事だ。


自分でもよく解らないテンションで
さっそくキッチンへと向かう。


キッチンはショールームとかでも
見たことがないような
特注の恐らく海外のメーカーから
取り寄せたものだと思う。


私もデザインをかじる端くれ
それくらいは検討がついた。


ビルトインの浄水器に
オール電化仕様の調理場。


広すぎるシンク。


調理器具に至っては
プロ並みの数が揃っていた。


けれど


そのどれもが
全くと言っていいほど
未使用だった。


そりゃ、そうだよね
自分で作るとかしなさそうだもん。


だけど、彼女とか…


ん…
なんだろ?
そんな事を考えると
ちょっと、胸がざわついた。


そもそも私がここにいても
大丈夫なの?


師匠、彼女とかいないのかな…


今、考えても仕方ないよね。


兎に角、先ずやるべきことは
朝御飯だよね。


冷蔵庫を開けるとーーーー


案の定ドリンク類しか
入っていなかった。


「想定内っと。」


仕方がないので
一階のコンシェルジュに聞いて
ここから一番近いコンビニを
教えてもらった。


適当に食材を買い、
今日の所は洋風の朝食を用意する。


メニューはチーズ入りのオムレツに
厚切りトースト。


それと野菜たっぷりのサラダも作った
ドレッシングはやはり
当然の如く調味料もなく
市販のものを用意。


果物は少しあったので
買ってきたヨーグルトと和えた。


置いてあったエスプレッソマシーンを
何とか使いその間にカップを用意する。


部屋中にコーヒーのいい匂いが
立ち込めた。


「っでどうしよう…」


張り切って朝食作ったはいいけど…


師匠、まだ起きてこないんだよねぇ。


こういう時って


起こす?


起こさない?


取り敢えず、
起きているかもしれないので
リビングから真っ直ぐ続く
広い廊下を歩いて
師匠の部屋に行くことにした。